第3章 巳早からのオビ
『…なんでもないよ
ちょっとゼンの心配してただけ』
結局そう嘘をつくしかなかった
貼り付けた笑みで笑って。
白雪は納得いかないような顔をしつつ
さやが何も話さないなら
聞かないほうがいいと思い、視線をそらし歩き続けた
いつの間にか門に着いていた
少し気まづいが、白雪を笑って見送った
『白雪、またね。勉強頑張って』
「ありがとう
無理、しないでね?」
『それは大丈夫!』
バイバイと手を振って去っていく白雪
さて、私はどうするかな
とりあえずこの門に
オビが来る事は間違いない訳だけど
そこを捕らえても意味が無いだろう
(ちゃんと段階を踏んで捕まえたいけど
まあ先走って接触しても問題は、ないはず)
一旦逃がすか
ゼンと白雪とハルカ侯がいる所に引っ張っていけばいい
そうと決まれば
さやは門から死角になるはずの
高い部屋へ向かう為階段を駆け上がって行った
『ふぅ…ここの窓なら
白雪にバレることも無く、オビにバレることも無く
観察出来るはず』
さやは事前に調べておいた
空き部屋に入り込む
城の中をくまなく調査しておいた甲斐があった
でもあんまりじっと見つめると
オビには気配でバレそうだよなー
さやは窓の傍に置いてある椅子を引き寄せ
窓の端に自分の顔は隠れるよう座った
一応これで気取られたとしても
平気、かな
『あ、白雪だ』
忘れた本を取りに来たのだろう白雪が
門番と少しばかりの会話してから
門をくぐるのが見えた
その後すぐ門に向かって、走ってくる男
ただ走っているだけなのに
キラキラと輝いてみえる
この人に会う為にここまで来た
この人の近くにいたくて剣を極めてきた
会いたくて
会いたくて
憧れて、恋をした
でも一戦交えるからには
容赦はしないから
私の実力は今どの程度?