第3章 巳早からのオビ
それから白雪の自宅に行くも
パン屋のおばさんから
昨日から帰ってない事を聞いたさや達は
急いでコトの山へ向かった
いくら物語を多少知っているからといって
山のどこに屋敷があるかなんてわからない
ただ闇雲に屋敷の光を探して
山を駆けずり回るしか、出来ることは無い
『ゼンっ!ゼン!』
「っなんだ!」
『あそこ!明かりが見える!』
明かりに注視して探していたさやは
左の方にゆらゆらと揺れる松明の光を見つけた
きっとあのシーンだ
白雪は上手くやっているだろうか
きちんとあの草は沢山持っていただろうか
駆け出すゼンを追い
足場の悪い山の中を走る
もうかなり暗くなってきた
帰る時はきちんと帰れるだろうか
白雪は迷わないだろうから大丈夫だけど
暗い夜道でゼンを怪我させでもしたら
ミツヒデや木々になんて言われるか
段々灯りが近くに見えてきた
男が白雪の横に松明を突きつけ何やら話している
それを確認したゼンは
猛スピードで白雪の傍へ走り
振りかざされた松明を剣で吹き飛ばす
驚く男に容赦なく鳩尾、頬と剣を叩きつけ
男は近くの木にずるずると寄りかかる
「よぉ白雪
日帰りじゃなかったのか?」
『男、動くな』
はあはあと息を上げ
白雪の顔の横に手をつくゼン
あれだけ全力疾走した後剣をふるえば
そうもなるが
さやは男の首に短剣をあて
動かないように威嚇する
「っ…護衛が居たのかよ…。
なんだ、赤髪献上した先で
俺が護衛の役目貰って、稼ぐって手もあったのにさ」
『アホな事言ってないで
その口を今すぐ閉じなさい』
「ちょっとぐらい
身の上話に付き合ってくれてもいいだろ?
この屋敷、俺ん家。貴族だった頃の別荘」
剣を首に突き立てられているというのに
飄々とした様子で話を始める男
(あっさりとしてると言うか
肝が座っていると言うか
まあ、嫌いじゃないけど)
「お前らみたいに
綺麗な服着て上品ぶってたって財を失えば
素っ裸、きたたねぇもんに塗れるもんだぜ
だが、俺はこんな暮らしを続けるなんでごめんだ!
手段は選ばねぇ
どんな方法でも金儲けしてやる
その為にちょーど使えそうだったんだけどな、赤髪は」