第3章 巳早からのオビ
『ゼンっ!
抜け出しちゃダメでしょ』
「さやっ!?
お前、追い付いてきたのか?」
庭園を走るゼンとさやは
ゼンの行くまま門へ向かっていく
ミツヒデ曰く最近の仕事の量はすごいらしく
うんざりしたゼンは見ていたけど
(まさか今日か)
『どこ行くつもりなの?』
「特に決めてないな
さやも来るか?」
『いや、どうしようかなー
とりあえず見送りは…ってあれ?』
ゼンが門近くの塀を乗り越えた時
白雪が門番と話しているのを見つけた
さやは生憎高い所は苦手なので
門越しにその様子を見る
「えーっと…何してるのゼンさや」
「ちょっとした運動だ
執務続きで体が訛ってもいかんからな」
「つまり、執務が続く中抜け出してきたと?
さやは何してるの?」
『抜け出したゼンを見つけて追いかけてきた
久しぶり、白雪』
ふわり笑って門の隙間から手を伸ばし
白雪の頬に触れる
よかった。元気そうだ
白雪も擽ったそうにさやを見て笑った
「こほんっ
まあ、しばらく顔も見られてなかったし
会えたな白雪」
優しい顔つきで白雪見つめるゼン
2人の雰囲気を見てさやは
やっぱり2人で行かせるべきだろうと再認識した
(ゼンもここのとこ頑張ってたし
…白雪に怖い思いをさせるけど、これは逃げたらダメなイベントだ)
「ゼン殿下ー、どこですかー」
『あ、ミツヒデの声』
「っ!…ここに来たって事は何か用だよな?」
ミツヒデの声に反応して、焦り白雪にそう聞くゼン
今頃ミツヒデはため息をつきながら
ゼンを探している事だろう
可哀想にと心の中でミツヒデに合掌して
早く早くとゼンに急かされる白雪を引き止める
『白雪、あの燃やすと痺れる薬草沢山つんできて』
「…いいけど、何に使うの?」
『いいから。頼んだよ!
あとゼン。早めに帰ってきてね』
「おう!ミツヒデには上手く言っておいてくれ!」
ゼンはそう言うと白雪を連れ軽快に駆けて行ってしまった
白雪、どうか無事で
明日私とゼンが迎えに行くから