第2章 ラジ王子
キィ…と扉が開いて、男が1人入ってきた
ゼンに視線が集まっていた事により
誰もその気配に気付かず、
男が感情の籠らない声で言葉を発した時
初めてその存在に気がついた
「「誰だっ!!」」
『お前…。よくのこのこ出てこれたな』
咄嗟に警戒態勢をとるミツヒデと木々
さやはゼンを守るように
抱える手に強く力を入れた
男はちらとさやとゼンを見ると
特に気にした様子もなく視線がを逸らした
「まぁいい…
解毒の薬はある方が持っています
大人しくご同行願えますね?」
「っ…!」
『ちょっとミツヒデごめん
ゼンを、お願いします』
傍で男を睨みつけるミツヒデに
ゼンを揺らさぬよう受け渡す
揺らしても大丈夫か分からないけど
余計な事をして、ゼンに何かあったら…
ミツヒデの腕の中に移ったゼンの顔色を伺う
(特別悪くは、なってないかな
お願い…私のせいで悪い方に変わらないで)
さやは深呼吸をすると
立ち上がり、男の前に進んだ
『私だけで、お願いします』
「さやっ…!」
「…それはなりませんな」
さやは真剣な目で男を見る
少しも動かない表情が
考慮する余地すらないと言っているようだ
確かに、ラジ王子の所望は赤髪
私はこの男についでに推されたに過ぎない
さやはふぅーっと長く息を吐いた
『…分かりました
白雪、ごめん』
*
「ほぉ…君がか!これは目を見張る…。
残された赤髪は本物だったのだな」
そう遠くは離れない屋敷にさやと白雪は
兵に連れて行かれると
すぐさま応接間へ案内された
ラジの前に現れた白雪をみたラジは
しげしげと赤髪を眺め、感心したようにそう呟いた
「ふむ、そちらが白雪殿の姉だな
確かに赤髪とは違った綺麗な桃色だ」
『…薬を頂けますか?』
「まあ、待て。
実はな、白雪殿
世にも恐ろしいことだが
私が白雪殿に求愛し逃げられたと、
市内や王宮で笑いものにされたているらしいのだ」