第2章 ラジ王子
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しばらくして白雪とゼンが帰ってきた
散歩に出る前より
打ち解けているような気がする
ゼンと白雪はにこにこと話をしている
さやは嬉しそうに2人を見つめた
「ゼン、これ届け物みたいだけど」
「!…それ、私が髪と一緒に置いてきたリボン!」
白雪が林檎に駆け寄り
籠の持ち手に付けられていたリボンを手に取る
確かにそれは白雪の愛用していたリボンだ
さやは分かっていて
驚いたような顔を作り、白雪へ近寄った
「それは確かなの?
似たようなリボンは沢山あるじゃない」
「うん…これは私のだ」
「ん?何か手紙か入ってるぞ」
林檎の隅に隠れるように
差し込まれていた手紙をゼンが手に取る
綺麗な封筒に蜜蝋でとめられたそれを
ゼンは気にする事無く開け、中を読む
しばらくして読み終わるとゼンは白雪を見て
呆れたような顔をした
「お前らタンバルンの人間だったんだな
これの送り主は国境近くまで
お前らを迎えに来てるらしいぞ
随分と執念深い紳士のようだな」
「あははっやるなーあいつ」
「あははー…ね、お姉ちゃん」
「笑い事じゃない!
国境をこえて逃げるくらいの大事だったのか?」
噛みつかんばかりの勢いで
白雪とさやに詰め寄るゼン
白雪とさやは顔を見合わせ
苦笑いを向ける
「相手が相手だったんで…」
「タンバルンの第一王子だよ」
「ラジっ!……!…っとか言うバカ王子か!」
勢い余って机に怪我をした手を叩きつけたゼン
痛そうに顔を歪めていた
国境通過の記録から何から何まで調べたんだろうなと
苛立たしそうに話すゼンに
白雪はそっと籠に入った林檎を手に取った
「籠に入れるくらい訳ない…か」
「白雪…」
「傷み始めてる、この赤もうだめかな」
寂しそうに、苦しそうに
林檎を見つめる白雪に思わず胸が苦しくなる
そんな事ないよ白雪
もう、美しい運命は回り始めているから
ゼンは白雪の手を取ると、その林檎にかぶりついた
「ゼ、ゼンっ…!ま、」
「ダメだろうゼン
自分で取らないと行儀悪いぞー」
「ゴホっ…」