第11章 標的11 風紀委員長
獄寺の頭を引っ叩いた。
もはやそのスリッパ捌きは芸人のハリセン並だ。
音に吃驚したいのりが振り返ると、綱吉はササッと素早くスリッパをしまった。
山本も何事もなかったかのようにおにぎりをもぐもぐする。
綾里は頭を抱えている獄寺を心配そうに見つめた。
「今凄い音がしたけど、何かあったの?」
「え……それは、その……っ」
獄寺が綱吉と山本をチラッと横目で見る。
2人は、「余計な事言ったら、分かってるよな? あ゛?」と目が語っていた。
「な、何でもないです! ただ、オレの頭にその……蚊が止まってて、それを10代目が退治してくれたというか……!」
「蚊って今もいるのかな……?」と、首を傾げた綾里だったが、何とか理解してくれたようで獄寺はほっと安心した。
―――綾里達の昼食はいつもこんな感じなのである。
「そういえば、リボーンさん来ないね。 どうしたんだろう?」
綾里がお手製の弁当を作ってくることもあって、リボーン本人も今日の昼食を楽しみにしていたのに。
今この場に赤ん坊の姿はなかった。
5人分あった弁当も、さすが育ち盛りの中学生といったところか残るのは……重箱の中央にちょこんと残ったウィンナーとデザートのプリンのみ。
「リボーンなら気になることがあるって朝早くに出てったよ。もうすぐ昼休み終わるし、来ないんじゃないかな。そんなことより―――」
綱吉はある1点に視線を集中させた。
獄寺と山本もごくり、と唾を飲んでそれを見る。
3人は何を熱心に見ているのだろうと不思議に思い、綾里も彼等の視線を辿った。
少年達がじぃっと見つめているのは―――
タコさんウィンナー……
男性陣3人は己の箸を素早く構えると、
「「「オラァッ!!!」」」
「きゃっ―――」
グサァっ!!!
3人分の箸が勢いよくウィンナーに突き刺さる(※食べ物をお箸で刺しちゃいけないよ、よい子はマネしないでね!)
いつゴングが鳴ったのだろうか、豹変した綱吉達に綾里は若干怯える。
とにかく戦いは既に始まっているらしかった。