第12章 標的12 体育祭
体育祭を一通り見終わった後 綾里の父親―――いのり聖(ひじり)は、満足した様子で自室の上質なソファから立ち上がった。
そしてDVDのお礼を言う為、送り主であるリボーンに電話をかける。
『ちゃおっス、聖。DVDは見たか?』
「ええ、たった今見終わったところです。”あの時”もそう思いましたが―――綱吉君達は私の想像以上に いい子達のようだ」
聖が微笑みながら言うと、電話越しにリボーンの小さな笑いが聞こえる。
『なんせツナ達は 綾里の 運命の人 だからな』
「…………リボーン。貴方も、ね」
『!そう……だな……」
リボーンが息を呑むのを聞いて、聖はそっと目を閉じた。
穏やかだった空気が今度は真剣なものへと変化する。
「……綾里や綱吉君達には、できることなら このまま平穏な中学校生活を送ってほしい。けれど 綾里の宿命が、綱吉君達を待ち受けるものが、それを許さないでしょう」
『ああ……』
「本当に私達大人はいつだって勝手ですね。子供達の平穏を願いながら、残酷なことを押し付けようとしているんですから……」
絞り出すような声で言う聖にリボーンがすかさず言葉を発した。
『けど、過酷な運命を乗り越えた先にしか手に入らないものもある。聖、お前は ”あの時の結末” を繰り返さない為に、綾里の傍から離れて そこ にいるんだろう?―――大丈夫だ。綾里にはオレ達がいる。綾里だって、ただ守られるだけの女じゃないってことはお前もよく知ってる筈だ』
その力強い言葉に、聖はようやく余裕の笑みを零した。
「……ええ、そうですね。私はまだそちらに行くことはできませんが―――綾里こと、よろしくお願いします」
『ああ、任せておけ』
リボーンの頼もしい一言を聞いて、聖は安心して電話を切った。
END