第11章 標的11 風紀委員長
「……いのり綾里、か……」
誰もいなくなった廊下で1人佇む雲雀。
雲雀は綾里から貰った包みをじっと見つめた後、
結ばれた赤いリボンを丁寧に解き、ズボンのポケットにしまった。
次に彼は袋に手を入れて中身を取り出す。
出てきたものは、
ヒヨコの形をしたクッキーだった。
……【ゆるキャラ】 とでも言うべきか、
ぽけ~っとしたマヌケででもどこか可愛らしい表情をしたヒヨコが雲雀の目に映る。
思わず噴出しそうになるのを片手で押さえ堪える雲雀。
それでも笑いが込み上げてきてしまい彼は肩を小さく震わせて笑った。
本当に今日の自分はどうかしてる。
偶然ぶつかった女子生徒にこんなに興味を抱くなんて。
……けれど、それは仕方なかったのかもしれない。
だってあんなにも目が離せなかった。
『ごめんなさい、お怪我はありませんかっ!?』
―――強き意志を秘めた真っ直ぐな瞳に。
綾里、僕は君のことがもっと知りたい。
雲雀が口にしたクッキーがサクッと軽い音をたてる。
甘すぎず、それでいて甘さが足りないなんてことはなく、ほどよい上品な味わい。
口に広がるクッキーの味はあの少女のように優しいものだった。