第10章 標的10 お医者さん
パタン、と部屋のドアが閉まるのを確認して綱吉はふぅ、と溜息をついた。
額に滲んだ汗を手の甲で拭い―――リボーンの冷ややかな視線を受けて、気まずそうに目を逸らす。
「ツナ、お前……」
「な、なんだよ! そりゃあ、オレだっていけないなとは思いましたですよ!? でもしょうがないですもの、男の子なんだもの!?!?」
「しょうがないですもの」って一体何語だ。
完全にパニックになって、言葉使いと言ってることが滅茶苦茶になっている綱吉にリボーンは小さく笑った。
「!お前、面白がって―――」
「ところでツナ……オレ達に言うことはあるか?」
「急にマジになって、どうしたんだよ?」
「お前、オレと綾里の会話、全部聞いてただろ」
「!!」
綱吉の肩がビクッと跳ねた。
「な、何のこと?」
「嘘をついても無駄だぞ―――聞いてないんだったら、何でドクターが来ることを知ってやがる」
「っ、そ、それは……っ」
決定的証拠を突き付けられ、しどろもどろになる綱吉にリボーンはいつもの表情に戻る。
「まあ、待て。 何もお前を責めてる訳じゃねぇ。ただ―――聞かないのか、綾里のことを」
リボーンの問いに綱吉は少しの間考えた後、彼を真っ直ぐ見つめ返した。
「そりゃあ、力とか代償って聞いて……本音を言うと、今すぐにでも知りたいよ……でも、綾里自身が話してもいいと思う日がくるまで聞かない。
オレは、綾里を信じてる」
綱吉が迷いなく言った。