第10章 標的10 お医者さん
―――その後、綾里は慌ててリボーンを離した。
顔を赤くした綾里は、「抱きしめちゃって、ごめんなさい!」と謝ったが、
離れる間際リボーンが残念そうにしていたのを彼女は知らない。
綾里は未だ意識が戻らない幼馴染を心配そうに見つめる。
「何とかしないと、このままじゃ綱吉が……」
彼を蝕んでいるのは不治の病、普通の手段では治すことはできない。
それが余計に綾里を不安にさせた。
「オレがイタリアから医者を呼んだから心配ねぇぞ。お前も知ってるだろ、Dr.シャマルだ」
「よかった……」
リボーンの言葉に綾里はほっと胸を撫で下ろした。
「「………………………」」
沈黙。
室内に何とも言えない空気が漂う。
それは綾里が一方的にそう感じているだけで、彼女はリボーンを抱きしめたことを気にしていた。
綾里は両手で赤い顔を覆う。
(何てことしちゃったんだろう、リボーンさんは本当は大人の人なのに……!失礼、だったよね……)
いつだって自分は 目の前のことでいっぱいいっぱいで。よく考えず、先走ってしまうことがある。
今日のこともあり、綾里は改めて自分が 【子供】 だと実感して、恥ずかしくなった。
(可愛いな、畜生)
――― 一方リボーンは、かああ、と顔を真っ赤にさせる綾里を見て胸をときめかせていた。
彼には綾里が何を気にしているのか、大体予想はついている。
リボーンは綾里の気を紛らわす為に部屋全体を見渡し―――ベッドで眠る綱吉に目をつけた。
ぴょん、と綱吉の隣に飛び乗ると、リボーンは少年の腕に浮き出ている文を読み上げる。
「 『小学生の時、自分のだと間違えたフリをして、綾里のリコーダーを 「うわあああああっ!?」
タイミングよく飛び起きた綱吉を見てリボーンはニヤリと笑った。
綾里が嬉しそうにベッドに駆け寄る。
「よかった、意識が戻って―――」
綱吉が綾里の肩をガシッ、と掴んだ。
「綾里、今の気にしちゃ駄目だ!!そうだ、ドクターが来てないか見てきてくれる!?」
「? ? う、うん、分かった!」