第9章 標的9 Let’s ボクシング!
―――放課後。
綾里と綱吉は二階屋の前に来ていた。
「綱吉、私につきあってくれてありがとう」
「いいよ、これくらい! ……でも、なんで―――」
……ボクシング部?
男らしい字で書かれた表札を見て 綱吉は疑問に思いながらも綾里の後に続く。
綾里は礼儀正しく扉をノックすると、引き戸を開いた。
「失礼します。 主将の了平さんはいらっしゃいますか?」
トレーニングをしていた了平は綾里に気づくと 嬉しそうに近寄って来た。
「よく来たな綾里! おお、沢田 お前も一緒か まってたぞ!」
「わっ! い、いや、オレはその、綾里の付き添いで……」
「お前の評判をききつけて タイからムエタイの長老までかけつけているぞ」
「は? タイの長老……?」
綱吉と綾里は互いに顔を見合わせ首を傾げる。
了平は右手でリングを指さした。
「パオパオ老師だ」
「パオ――ン!」
そこにはゾウのかぶりものを身につけ グローブをしたリボーンの姿が。
(てんめー!!!)
綱吉は心の中で怒りに震えた。
一方綾里はリボーンの格好を見て目をキラキラ輝かせている。
「わぁ、可愛いですね! リボ―――むぎゅ!?」
リボーンが綾里の腕の中に飛び乗り、口をグローブで塞いだ。
綾里とリボーンは、小さな子供が内緒話をするかのように声をこっそり潜める。
『どうしたんですか? リボーンさん?』
『綾里、今のオレはパオパオ老師だ。 オレがリボーンであることは2人だけの秘密だぞ』
【2人だけ】 の部分をやけに強調して言うリボーンに綱吉がすかさずツッコんだ。
『2人だけじゃないから! オレにももろバレてるからねっ!?』
『じゃあ、3人だけの秘密だね!』
どこか楽しそうにのほほんと言う綾里。
『いや、綾里。 とりあえずコイツがどうしてこんな格好してるか疑問を持とうね?』
『細かい事を気にするからお前はまだガキなんだぞ』
『オマエ(赤ん坊)に言われたくねぇ!!』