第9章 標的9 Let’s ボクシング!
「そういえば、何で3人でいたの?」
京子が不思議そうに首を傾げた。
「あ、まさかお兄ちゃん 綾里ちゃん達つかまえて メーワクかけてないでしょーね!」
「ない!そうだな、綾里?」
「はい! ―――むしろ私達が了平さんを巻き込んでしまったというか……ごめんなさい、了平さん」
まるで小動物がしゅん、となったように項垂れる綾里。
その可愛らしい姿に綱吉と京子の胸がキュン、と高鳴った。
一方了平はさすが妹をもつ兄といったところか優しく微笑むと、ごつごつとした大きな手で綾里の頭を撫でる。
彼は小柄な綾里の視線に合わせるように語りかけた。
「急いでいたのだろう? それにオレはへっちゃらだ! お前が謝る必要は極限にないぞ!」
「了平さん……ありがとうございます!」
元気のないひまわりが光を浴びてぱあっと花開くように笑う綾里。
了平は僅かに頬を赤く染めた。
多くの者を魅了するその笑顔は 天然である了平をも虜にしているようだ。
了平は照れ臭さを誤魔化すように綱吉の方に向き直る。
「自己紹介がまだだったな。オレはボクシング部主将 笹川了平だ!!座右の銘は〝極限〝!!」
力強く声を張り上げる了平。
まさにボクシング部といった感じだ。ボクシングは彼の為にあるような気さえする。
口をあけてぽかんと固まる綱吉に了平は肩をガッと掴んだ。
「お前を部に歓迎するぞ沢田魔王!!」
「まだそのネタ引っ張るんですか!?」
「違うのか? 京子からそう聞いたが……」
「犯人は京子ちゃん!?」
綱吉が勢いよく京子の方に振り返る。
京子はお茶目に笑った。
「ごめんねツナ君。 でもツナ君と私、ライバルだから!
―――そうそう、お兄ちゃんも綾里ちゃんのこと狙ってるの。兄妹共々、よろしくね!」
また恋敵が増えた……ッ
綱吉はがっくりと肩を落とす。
「……ボクシング、か……」
幼馴染の苦労も露知らず、何かを考え込んでいた綾里がぽつりと呟いた。
綱吉は不思議に思い 尋ねる。
「どうしたの綾里?」
「!あ、え、えと、放課後になったら言うね!」
「だから今は気にしないで!」と綾里は笑った。