第9章 標的9 Let’s ボクシング!
綱吉は校門に入ってすぐの所で綾里を下ろすと ふー、と息を吐いた。
どうやら彼の活躍のおかげで遅刻せずにすんだようだ。
鞄から制服を取り出しながら綱吉は爽やかに笑う。
「やっぱり、愛の力って凄いや」
いや、死ぬ気弾の力ですからね。
「綱吉、了平さんが!!」
綾里が必死な声を上げたので綱吉は不思議に思い 自分の肩に視線を向け―――ギョッ、と目を見開く。
そこにはぐったりぶら下がっている了平の姿があった。
(!? やべー人ひっかけてる――っ)
「了平さん、大丈夫ですか!?」
心配そうに問いかける綾里。
了平は絞り出すような声で、
「まぎれもない本物……」
そう呟くと何故かでんぐり返しを始めた。
了平は三回転するとビシッと片膝立ちになる。
「聞きしに勝るパワー・スタミナ! そして熱さ!! やはりお前は百年に一人の逸材だ!!」
「は?」
「我が部に入れ 沢田魔王!!」
「ケンカ売ってるんですか?」
「おまえのハッスルぶりは妹と綾里からきいているからな」
「オレの話聞いてくれません!?」
何事にも真っ直ぐな了平の場合、全くもって悪気はないのだから困ったものである。
「また厄介な奴が増えた……」と溜息をつく綱吉だった。