第6章 標的6 ポイズンビューティー
結局、あれから頭が痛いまま朝を迎えた綱吉。
「はぁ……」
机に肘をついて溜息をつく綱吉。
そんな彼を見て不思議に思った山本と獄寺が近づいてきた。
「どうしたんだ、ツナ?」
「それがさ、また恋敵が増えちゃって……」
「 (なぁっ!?) 元気出してください、10代目!
今日は家庭科実習で綾里さんの手料理が食べられるじゃないですか!!」
「そうだった……!」
綱吉はガバッと立ち上がる。
今日の実習ではおにぎりを作るのだ。
このクラスでは面白いことに、女子が作ったものを男子が食べられるという行事がある。
綱吉の憂鬱が一気に晴れた。
***
「今日は家庭科実習でつくったおにぎりを男子にくれてやるーっ」
「オ―――!!!」
ノリノリでおにぎりを手にし並ぶ女子、雄叫びを上げる男子。
なんともまあ仲の良いクラスである。
「変な行事スね(待っててください、綾里さん!すぐに行きますから!!)」
クールぶっていても、頬が赤くなっているのを隠しきれていない獄寺。
「綾里、中の具はなんだ?」
遠くから山本が呼びかけた。
綾里はにこりと微笑む。
「おかかと昆布とツナマヨだよ」
「綾里、オレのこと想って握ってくれたんだね……!」
「う、うん……?」
違うだろ。
目をキラキラ輝かせる綱吉にクラス一同心の中でツッコんだ。
綱吉は、綾里のおにぎりを貰う為に彼女の元へ行こうとするが―――ある人物に気づく。
(あれは!ビアンキ!!)
いつの間にか彼女は、綾里の背後にいた。
その手には虫がうじゃうじゃと湧くなんともおぞましいおにぎりが握られている。
ビアンキはあろうことか自分のおにぎりと綾里のおにぎりをすり替えてしまった。
あまりの早技だったので、そのことに綾里は気づいていない。
「ちょっまてよっ、何してんだおまえ!?」
綱吉が慌てて駆け寄るが、当人は忽然と消え失せていた。
「!? チィッ、どこ消えやがった……!!」
魔王モードになりかかっている綱吉。
そうとは知らない#いのり#は無邪気に笑う。
「綱吉、食べる?」
「綾里……ッ」
綱吉は彼女の笑顔にやられ、ぎゅっと己の胸元を掴んだ。
頼む、綾里、そんな可愛い顔で笑わないでくれ……っ