第6章 標的6 ポイズンビューティー
蝉が忙しなく鳴き、太陽がジリジリと容赦なく照り付ける。
綱吉と綾里はそれぞれビニール袋を手に持ち、灼熱の暑さの中を歩いていた。
2人は奈々に買い物を頼まれ、自宅に帰る途中なのである。
「あついな――のどかわいた――」
「私飲み物買ってくるよ、綱吉は何がいい?」
「コーラがいいな。お金―――」
綱吉が自分の財布を取り出そうとすると綾里が
「いいよ、私が奢るから!」と、ニコッと笑い、元気よく走って行った。
彼は少女の後ろ姿をふんわりとした優しい表情で見送る。
背後で自転車のベルが鳴った。
綱吉は振り向くと、ギョッと凝視する。
自転車に乗っているのは、スレンダーな女性なのだが……
(ママチャリで……メットにゴーグル?)
何とも不思議な格好をしていた。
女性は綱吉の前に自転車を止めると、ヘルメットとゴーグルを外す。
さらさらと流れるような長い髪、パッチリとした大きな目、色気のある唇―――紛れもない美人だ。
男なら思わず見惚れてしまうところだが、綱吉は美女に
(綾里、早く帰って来ないかな……)
全くもって興味がなかった。
今まで数多くの異性から注目されてきた女性は予想外の反応に若干驚く。
けれど大人の余裕といったところか、ニコリと微笑むと
「よかったらどーぞ」
ポイッと綱吉にコーラの缶を投げ、去って行った。
放り出されたコーラ、綱吉は反射的にサッと避ける。
受け取ってもらえなかった缶は地面にゴトリと落ちた。
(オレは綾里にしか興味ねぇんだよ)
相変わらず真っ黒な綱吉様なのでした。