第1章 標的1 幼馴染と家庭教師
(将来……か)
自室に戻った後、特にすることがなかったので外に出た綾里。
行くあてもなく適当に歩いていた。
(……私、いつまで綱吉の傍にいられるのかな?)
今はまだ平穏に流れる日々。
それはいつか跡形もなく終わることを知っている。
だから私は その時まで精一杯生きようと決めた。
悔いの残らないように。
「―――あれ? 綾里ちゃん!」
「あ。京子ちゃん!それに持田先輩も。こんにちは」
「あ、ああ(綾里にまで会えるとはラッキー!)」
出会ったのは学校の親友と先輩。
そう言えば京子ちゃん、今日先輩と帰るって言ってたな。
「綾里ちゃん、家に帰ったんじゃなかったの?」
「暇だから散歩してたんだ」
「そっか、だったら一緒に帰らない?
持田先輩とじゃつまらなくて飽き飽きしてたの」
「!! そ、そんな、京子……っ」
「う、うん、いいよ……?」
……あれ、何だか京子ちゃんが黒い?
いつものように無邪気な京子だがそれが余計に怖い。
初めて見る親友の一面に困っていると、
「おっ 偶然発見!!」
幼馴染がパンツ一丁で落ちてきた。
「!」
「綱吉っ!? (あの頭の炎は死ぬ気の炎!? まさか……)」
綱吉は京子の隣にいる持田をずーんと跳ね飛ばすと、
綾里に向かって険しい形相で言い放った。
「いのり綾里!! オレとつき合ってください!」
「! つ、つな……っ」
突然の告白に頬を赤らめる綾里。
「早く服着て! 捕まっちゃうよっ!!」
……別のことで赤くなっていた。
「キャアアアア」
「え、京子ちゃん!?」
「京子! 綾里!」
京子は綾里の手を掴むと、持田の制止を聞かずに走り去って行った。