第4章 標的4 おませさん
黒い癖っ毛の髪とタレ目、スラリとした体型。
牛柄のシャツにペンダントを身につけ、ジーンズに両手を突っ込む青年は、今目の前で消えたランボとどこか似ていた。
彼は、フーッ、と長い溜息をつくと困ったように口を開く。
「やれやれ、どうやら10年バズーカで10年前に呼び出されちまったみてーだな」
「なっ」
「お久しぶりです、若きボンゴレ10代目」
「このヒト……え?」
状況が理解できていない綱吉。
青年はキザったらしく、右手の人差指と中指を自分の髪に絡ませた。
彼は自分が10年後のランボであること、10年前の自分が放ったのは 【10年バズーカ】 という物で、撃たれた者は 【10年後の自分と5分間だけ入れかわることができる】 ことを説明した。
そんな夢のような物があるとは思っていなかった綾里は、目をキラキラ輝かせながらランボを見つめる。
「ランボ君、凄い! 大きいね!」
「ッ!! あ、貴女は……10年前の、綾里さん……?」
「うん、そうだよ」
「ああ、綾里さん……10年後の貴方は相変わらず可憐で美しいですが、過去の貴方も―――なんて、愛らしい……」
「え、ら、ランボ君っ!?」
ランボは綾里の前に跪くと、彼女の手をとり―――恭しく口付けた。
今まで男性からこんな風にキスされた経験がなかった綾里は、一瞬で頬を真っ赤にさせる。
「ツナ、フォーク」
「はい、これ使って」
まるで手術する医者が助手に「メス」とでも言うようにリボーンは手を差しだした。
綱吉は迷わず床に落ちていたクリームまみれのフォークをリボーンに手渡す。
何て息の合った2人、師弟の見事な連携プレーだ。
嫉妬に駆られた綱吉とリボーンは、一刻も早く綾里からキザ男を遠ざけたいらしい。
リボーンは手に持ったフォークをランボの頭に
―――容赦なくぶっ刺した。
「が・ま・ん」
刺されたランボは体をふるふる震わせて耐えていたが、すぐに
「うわぁああ」
「ランボ君っ!?」
綾里が慌ててランボを引き止めるも、彼は大泣きして部屋を飛び出して行った。
―――どうやら彼は外見は変わっても、中身はあまり変わっていないようだ。
END