第3章 標的3 野球少年
「山本……
歯ァ食いしばれ……ッ!!!」
「な―――」
我らがボス綱吉が山本に有無を言わさず右ストレートを叩き込んだ。
それは見事ヒットし 山本は綾里から離され、尻もちをつく。
綱吉は満足そうにハッ、と笑った。
「つ、綱吉っ!?」
「ツナっ!?」
漆黒のオーラを纏っている綱吉に驚く2人。
綱吉はスタスタと彼の近くまで歩いて行くと、山本の胸倉を掴み 本人しか分からない声で言った。
「これは綾里を泣かせた罰だ。……あと、オレがいるのに、2人の世界つくらないでくれる?」
……って、コレ、ただの嫉妬じゃないですかっ!?
どうやらずっと黙って綾里と山本の甘い光景を見ていた綱吉は彼がとろうとした行動にブチギレたようだ。
綱吉はニコリと笑みを浮かべる。
「幼馴染舐めんなよ。いくらクラスで人気なお前でも―――綾里だけは渡さない」
「!!」
綱吉の言葉に衝撃を受ける山本。
しかしその言葉のおかげで 彼が抱いていた ある感情 の答えが見つかったようだ。
ああ、そうか そういうことか。
昨日、綱吉の事で笑顔になった綾里を見た時 胸が痛くなったのは、
彼女を自分の腕の中に閉じ込めたいと思ったのは、
綾里が 好き だからだ。
それは 【友人として】 好きではなく、 【1人の女の子】 として好きなのだと、山本は気づいた。
入学当初から綾里に抱いていた不思議な感情にようやく答えが出た。
そうと分かれば―――
「ハハ、ツナはヤキモチ焼きなのな―――オレも負けないぜ」
真剣な顔で言った山本に
(やばい、恋敵増やしたっ!?)
と、素に戻る綱吉なのでした。