第3章 標的3 野球少年
「どうするの綾里~? このままじゃ雨の彼、死んじゃうよ~?」
小柄で整った顔、黒の髪と瞳、そしてその身に纏うのも黒い服、なのに肌は陽の光を知らぬかのように白い。
右手の人差指には黒薔薇の指輪が鈍く光っている。
誰にも気づかれず嗤う少年は例えるならそれは、とても深い奈落の闇のようで。
「奇跡を起こしてみなよ、ねぇ……青薔薇姫?」
その瞳には、底冷えするような 狂気 が宿っていた。
***
屋上―――本来人がいるはずのないこの場所に生徒達が集まっていた。
「ツナ……止めにきたならムダだぜ。 おまえならオレの気持ちがわかるはずだ」
昨日の練習で片腕を骨折してしまった山本。
錆びて今にも折れそうなフェンスの向こうに立っている。
始めは皆 何かの悪い冗談だと思っていたが どうやら彼は本気らしい。
山本は暗く、諦めた表情をしている。
「ダメツナってよばれてるおまえなら何やってもうまくいかなくて死んじまったほーがマシだって気持ちわかるだろ?」
「……分かんないよ」
綱吉の言葉が気に障った山本は、ピクッと眉を顰め怒った口調になる。
「さすが最近活躍めざましいツナ様だぜ。 オレとはちがって優等生ってわけ―――」
「分かる訳ないだろっ!!! 綾里を悲しませる奴の気持ちなんか!!!」
「!?」