第3章 標的3 野球少年
翌朝、綾里は手製のガトーショコラをクラスメイト達に配った。
「うわぁ、これすっごく美味しい!」
「さすがスイーツ部のルーキー。 プロ並みね!」
親友の笹川京子と黒川花が感激の声をあげた。
甘い物好きの2人はとても美味しそうに笑って食べてくれる。
「嬉しい、2人ともありがとう」
自分の作ったもので人が笑顔になるのが綾里はたまらなく好きだ。
「沢田、アンタは食べないの?」
「オレは昨日家で食べたから」
「いいな~ツナ君は。 いつでも綾里ちゃんのお菓子が食べれて!私、綾里ちゃんの旦那さんになりたい!」
「いいわね、それ!」
「えぇーっ!?」
「も、もう、京子ちゃん、花まで……」
照れくさそうに頬を染める綾里。
花は冗談で面白がっているが、何てこった京子の方は真剣だ。
仕舞いには 「今日からツナ君と私、ライバルだね! 私、負けないよ!」 と言い出す始末。
そりゃあ、こんなに可愛くて魅力的な綾里だもの?
ライバルが増えるなって思ってましたよ?
鬼畜家庭教師とか? ダイナマイト野郎とか?
あ、昨日の野球野郎も危ないな。
……ですけどね、
京子ちゃんがライバルに回るって一体どんな事態だこれは。
これが獄寺あたりならブラック化して強気に出れるのだが、相手はましてや女の子。
しかも京子は綾里の親友、迂闊に手を出す訳にもいかない。
反応に困った綱吉は何とか話を逸らそうとして ふと、綾里の机の上に残されている1つの包みに目がいった。
ガトーショコラが入った 透明でピンクの水玉模様の包み。
ちょこんと結ばれた赤いリボンが何とも綾里らしい。
ガトーショコラは今いるクラスメイト全員に手渡されている。
それじゃあ、これは?
「ねぇ、綾里。 これ誰の?」
「……それ、山本君のなんだけど……」
顔を曇らせる綾里。
綱吉は教室を見渡すが当人はいない。
綾里がクラスでお菓子を配る時には、いつも真っ先にとりに来るのに。
この時、綾里と綱吉は何か嫌な予感を感じていた。
そしてそれは すぐに的中する。
「大変だー!!! 山本が屋上から飛びおりようとしてる!!」