第3章 標的3 野球少年
おそらく彼はスランプになっているのだろう。
山本は整った顔を深刻そうに曇らせた。
「ツナ、いのり……オレどうすりゃいい?」
「え゛え゛!?」
まさか自分に聞かれると思っていなかった綱吉は、困るといつもの癖で綾里を見てしまう。
「上手く言えないけど、逃げずに自分と向き合えばいいんじゃないかな。山本君のことは山本君にしか分からないんだし」
「……そっか、ツナは?」
(オレにもきくのー!!?)
「やっぱ……努力……しかないんじゃ……ないか……な……」
はっきりと言った綾里に対し、綱吉は視線を反らしながら答えた。
苦手な勉強を少しずつ始めているとはいえ、まだその成果はあらわれていないし、動機は不純だし……色々と微妙だ。
自信を持って努力している、とは言いづらい。
「だよな」
「へ!?」
「いや オレもそーじゃねーかなーって思ってたんだ。 さすがツナ気があうねぇ」
「そ……そう?」
そーか、そーか、やっぱそーかと綱吉と肩を組む山本。
照れくさそうに笑う綱吉。
綾里はそれを微笑ましそうに見ている。
「お~し 今日は居残ってガンガン練習すっぞーっ。いのり、明日菓子楽しみにしてんな!」
「うん、任せて!」
3人は笑いあった。
明日、まさかあんな事が起こるとは知らずに。