第12章 標的12 体育祭
「ほんと何なの沢田綱吉。さっさと綾里を渡さないと噛み殺すよ」
「~それはコッチの台詞です! 婚姻届を常に持ち歩いてるとか、ほんとアンタ何なんですか!?」
「そう簡単に綾里は渡さないぞ!」
愛しい少女を奪われたことにより急速に不機嫌になった雲雀が綾里を取り戻しに行こうとするが、綾里の事に関してだけは負けていない綱吉が了平と2人がかりで やっとの思いで風紀委員長の進行をくい止めていた。
けれど 『恐怖の風紀委員長』 のパワーはとんでもなく凄い。
早々に負けるつもりはないが、それもいつまでもつことやら。
綱吉が少し弱気になりかけた その時、頼もしい増援が現れる。
「ツナーーーっ!!」
「10代目ーーーっ!!」
山本と獄寺だ。
2人の姿を確認して綱吉は ほっと胸を撫で下ろす。
綱吉達は集結すると、横一列になって雲雀と対峙した。
(殺りづらいな……)
雲雀が舌打ちした。
彼は邪魔する者の人数が増えたことに困っているのではない。
邪魔する『相手』が厄介なのだ。
雲雀は前回の綱吉達との戦いで……認めたくはないが、彼等が綾里にとって大切な者達なのだということを理解した。
以前の雲雀なら容赦なく 『噛み殺して』 いたが、そうすれば あの子は深く悲しむだろう。それだけはしたくない。
面倒くさそうに溜息をつき、雲雀が構えていたトンファーを下ろした。
―――それだけ彼が綾里を真剣に想っていることが分かる。
綱吉達は揃って目を丸くした。
「雲雀さん……?」
「…………棒倒し」
「へ?」
「しょうがないから、棒倒しで決着をつけよう」
「「「「!!!!」」」」
雲雀の提案に綱吉達はごくりと唾を飲んだ。
綱吉は他の仲間達を見やる―――全員覚悟したように頷いた。
「分かりました。その勝負、受けてたちます!」
「そう、なら―――B・C組み総大将、前に出ろ」
雲雀が今まで話についていけず、見ているしかできなかった他の生徒達に向かって呼びかけた。
まさか指名されると思ってなかった者達は大いに怯え、慌てる。
「いい、一体なん…―――グハッ!?」
「ブヒーッ」
疑問を口にすることを許されないまま、両チームの総大将は雲雀のトンファーによって地面に沈められた。