第12章 標的12 体育祭
「どうしよう、嬉しいよ」
「っ、ああ、あの、恭弥さん……!?」
片手で綾里を抱えながら、もう片方の手で己の口元を覆う彼の顔はどこか赤かった。
どうやら綾里は 雲雀の何らかのスイッチを押してしまったらしい。
「最初はお題を 『風紀委員長の隠し持っている婚姻届』 にしようと思ったんだ。でも君との結婚は したくてもまだ年齢的に無理だし、でも将来必ず必要になると思って用意してたんだよね。本音を言うと もっと大人の段階に進みたいところなんだけど 綾里との関係は大切にしたいから物凄く我慢して――――――」
こんなにベラベラと喋る風紀委員長なんて滅多に見られないぞ。
RPGで例えるならレアボス級に珍しい。
すっかり有頂天になっているこの男。
綾里にいたっては雲雀があまりに早口に言うので 話に全くついていけず、疑問符を飛ばしまくっている。
そしてついに綱吉達が恐れていた事態が起こった。
「でも君から僕を欲しいって言うなら問題ないよね―――草壁、今から応接室に戻るから人払いしておいてくれる? 僕はこの子と愛を――――「させるかあああ!!!!」
普段の彼とは思えない、まるで光のような速さで現れた綱吉が雲雀の持っている携帯電話をスリッパで叩き落した。
綱吉は自分の後を追いかけてきた味方達に向かって命令を下す。
「緊急事態発生、フォーメーションAッ!!」
『了解!』
……これは一体どこの特撮ヒーローなのだろうか?
どうやら綱吉達 身内にのみ知っている合図らしく、命令を下された者達は一斉に行動を開始した。
まず京子やハル達女性陣が雲雀から綾里をひったくり、戦いに巻き込まれない安全な場所へと移動する。
ビアンキは逃げる少女達をサポートしつつ、守るように少女達の前に立った。
リボーンはインカムで増援を呼ぼうと通信を試みる。
―――あの家庭教師ほどの腕なら1人で簡単に解決できるのだろうが、それでは意味がない。
大人組は少し手伝うだけで後は綱吉達 生徒に任せるつもりだ。
リボーンは綱吉に目を向ける。
綱吉は了平を伴って雲雀と睨み合っているところだ。
―――『増援』 ももう少しで到着することだろう。
さぁ、ツナ。
このピンチ、どう切り抜ける?