第12章 標的12 体育祭
[借り物競争]
『次の種目は 借り物競争 です。出場する生徒は 係りの指示に従ってゲートまで集合してください。繰り返します、次の種目は―――』
女子生徒のアナウンスが聞こえ、関係のある生徒達はぞろぞろと指定のゲートへ向かった。
Aチームの出場者の中には綾里と京子が含まれている。
綱吉達は いつものように笑顔で2人を送り出した。
「綾里ちゃん、お互い頑張ろうね!」
「うん!」
同じ組である京子と綾里がチームの為に勝利を誓い合い、京子は1コースに 綾里は4コースに別れた。
ちなみに今回の借り物競争は1組6人で構成される。
走者は 約50m離れた所に設置されている 長机の所まで走っていき、その上に置かれている箱の中からクジを引いて 書かれてある お題の物を借りてゴールを目指す。
ここで重要なのは どんな物に当たるか。
足の速さだけでなく運の良さも試される競技だ。
ピストルが鳴った。それと同時に選手達が一直線に駆ける。
トップを走るのは 先程も活躍した綾里だ。
相変わらずの惚れ惚れする様な走りに 見ている者達は彼女に釘付けになる。
「あの子って確かスイーツ部でしょ。 なのになんであんな……」
Bチームの応援団から上がった女子生徒の疑問を聞いて、Aチームにいるスイーツ部員達は相好を崩した。
「スイーツ部が 『作ってただ食べているだけの部活』 だと思ったら大間違いよ」
意気揚々と話すのは 黒のショートボブに活発な目が印象的の―――田村千夏だ。
女子200m走の時 綾里の前に並んでいた あの少女でもある。
「私達の部活はね。お菓子を作ってお茶会するだけじゃなくて、『走る』ことも活動内容の1つなの~」
のほほんと話す 栗色のウェーブパーマの少女―――白鳥かのんはスイーツ部をまとめる部長だ。
何で走るのか分からない様子の周囲に説明するべく千夏が かのんの言葉に続く。
「よく 『甘い物は別腹』 なんて言うけど……。摂りすぎたカロリーはね、どこかで消費しなくちゃいけないのが現実よ!じゃなきゃ、お腹とか太ももとか!その他もろもろが大変なことに……ッ」