第12章 標的12 体育祭
Aチームが待つ応援スペースに戻った綾里は大勢の人からお祝いの言葉を受け、これまた沢山の人から頭を撫でられたり、女子にはぎゅっと抱きつかれたりした。
「―――隼人、こんなに頑張ってくれて本当にありがとう。名前で呼んでくれて嬉しかった」
絶叫しながら全力疾走して疲れたのだろう、ぐったり地面に座り込んでいる獄寺の頬を綾里は柔らかなタオルで包み込んだ。
あの時 無我夢中だった獄寺は無意識に綾里を呼び捨てにしていたことに気づき、赤かった顔をさらに赤くして俯く。
「おお、タコヘッドが茹で上がったぞ!」
チームにどっと笑いが起こった。
了平はからかうように言ったが、その表情は普段見れない獄寺の熱い一面を見れて どこか嬉しそうだ。
「最初の頃は呼び捨てにできないって落ち込んでたくせに、ちゃんと言えたじゃねぇか」
ニヤリと笑うリボーンに獄寺は慌てて顔を上げる。
「い、今はもう…………」
獄寺が言葉を濁し 綾里を見つめる。
視線を受けた綾里は ふわりと優しく微笑み返した。
バタン
獄寺が湯気を立てながら盛大に倒れる。
なんかもう色々と限界だったようだ。
「隼人!?」
「ハハッ、お疲れ様なのな獄寺。心配すんな、獄寺はオレが保健室に運ぶから。棒倒しに間に合わないようだったら叩き起こすし」
こうして獄寺は優しいのか腹黒いのか分からない山本に(両方だろう)肩に担がれて保健室に運ばれていった。
とにもかくにも色んな人達の頑張りのお陰で 現在AチームはB・C両チームを抑えてトップに躍り出ている。
さっきの200m走でチームの士気や結団力も高まったことだし、ここは次の種目でも勝って 一気に差をつけたいところだ。
(なんか……今年の体育祭、楽しいかも……)
綱吉は噛み締めるようにそう思った。
今までは体育祭って単語を聞いただけで憂鬱だったのに。
取り組む姿勢を変えただけで、喜びを分かち合える仲間がいるだけで、こうも違うとは。
そんな綱吉の心境の変化に気づいたのか、綾里とリボーンはお互いの顔を見合わせて そっと微笑み合った。