第12章 標的12 体育祭
「山本ー早く!こっちこっち!」
応援団の最前列を陣取る綱吉達が自分の競技を終えて走ってくる山本を手招きした。
山本は急いだ様子でこちらに駆け寄ると 体操着の裾で己の汗を拭いながら問いかける。
「200m走、綾里 出るんだったよな! もしかしてもう走っちまったか?」
「いいえ、まだ大丈夫。綾里は最後の組よ」
ビアンキの微笑みを見て 山本はほっと胸を撫で下ろした。
「―――綾里ちゃん、何だか少し緊張してます……」
私服姿のハルが祈るように手を組みながら心配そうに見つめた。
「綾里ちゃんなら大丈夫だよ。私達が作った お守りがあるんだし!」
「京子ちゃん……はい、そうですね!」
綾里を通じて知り合ったハルと京子。
彼女達は綾里と同じ『甘いもの好き』で共通の趣味があり、もともとすぐに人と打ち解ける性格もあって 2人が仲良くなるのは あっという間だった。
「京子の言うとおりだ! 極限心配ないぞ! あのハチマキにはオレ達の愛がこめられているからな!!」
「そういう恥ずかしいこと大声で言わないでください……!」
赤面した綱吉が了平の口を手で押さえ、キョロキョロと周囲を気にする。
「でも本当のことなのな」
「ちょっ、山本まで……! そりゃあ、まぁ、そ、そうだけど……!」
「ふふっ、綾里ちゃんが勝てるように、ケガしないようにって、皆 一生懸命 綾里ちゃんの為に願いをこめてたものね」
とても微笑ましそうに子供達を優しい表情で見守る奈々。
「オレっちも 綾里にラブラブパワーこめたもんね!」
いつも ふざけて遊んでばかりいるランボも 綾里が出る競技を楽しみにしているのか、今日は大人しく 奈々に抱っこされていた。
「そういえばリボーンと隼人の姿が見当たらないわね。どうしたのかしら?」
ビアンキが応援団の周囲を見回してみたが 2人はどこにもいなかった。
恋焦がれる少女の晴れ舞台だ。
普段の彼等なら率先して前を占領してそうだが……。
その質問には綱吉が答えた。
「リボーンと獄寺君なら 『重要な使命』があるってさっき――――――」