第12章 標的12 体育祭
~特訓編 おまけ~
全身ずぶ濡れになりながら無言で陸に戻ってきた綱吉(その光景は井戸から這い上がる貞子のようだったと通行人Eは語った)
……彼の右手にはいつの間にか青いスリッパが握られており、
ニタリ、と笑う その表情は山本達が自分のしたことを心底後悔するくらい恐ろしいもので。
スパーン!
「むぅ……」
了平。
スパーン!!
「ぐはっ」
獄寺。
スパーン!!!
「っ、いって~」
山本。
1人、また1人と、綱吉のスリッパの餌食になっていく。
最後に綾里の番になった。
綾里は潔く覚悟を決めており、静かに目を閉じた。
けれど、綱吉の反応は 綾里の予想外のもので。
ペシッ!
「あいた!」
思わずそんな声が出てしまったが、全然痛くなかった。
1人だけ加減して叩かれた綾里は額を押さえながら不思議そうに綱吉を見つめる。
彼は拗ねたように ぼそっと呟いた。
「……山本にばっかり、抱きついてんじゃねぇよ」
綱吉は子供みたいな嫉妬をしていることに気づき、恥ずかしくなって そっぽを向いた。
綾里達は互いの顔を見合わせ、ここは素直に謝ろうと全員その場に正座する。
「「「「すみませんでした」」」」
川原で1人の少年に対し 正座であやまる少年少女4名。
傍から見ればそれは とてもつもなく異様に見えたに違いない。
「……これ、聖の奴に送るか?」
綱吉達に気づかれないよう、ひっそりと 今までの出来事をビデオカメラに録っていたリボーンは、この場面を消すか消さないかDVDを送る前日まで悩んだそうだ。