第12章 標的12 体育祭
「ひい! 登ったはいいけど おりれない~~っ」
一方 下でそんなことが起こっているとは露知らず、まるで好奇心で木に登った子猫の状態になっている綱吉は 棒にしがみつきながら途方に暮れていた。
しかし、どこからか甘ったるい空気を感じ取って、気になって下を見下ろしてみる。
すると最初に獄寺と了平の姿が目に入った。
彼等は棒から少し離れた所で互いの胸倉を掴みあっていたが、両者とも顔を真っ赤にして固まっており、ピクリとも動かない。
「お前ら棒倒しはどうした!?」とツッコミたかったが、綱吉も獄寺達の視線の先に目を向け―――同じように固まった。
そこには、
熱い抱擁を交わしている山本と綾里の姿が。
「あ、ああ、あの、武さん!?」
突然抱きしめられ パニックになっている綾里に、山本はとても真剣な様子で、
「ほら、もっとくっつけよ。でないと、ツナが落ちちまう」
山本はそんなことを言っているが 明らかにこの少年は綾里を抱きしめたいだけである。
そのことに気づかない綾里は、
「そ、そっか!! じゃあ、その! お、お邪魔します……!」
……ちょっと言ってることがおかしい綾里は、とても恥ずかしそうにぎゅうっと山本に抱きついた。
山本は小さく笑った後、至極 嬉しそうに綾里の耳元で囁く。
「……っとに、可愛いな。お前…「ピン ポン パン ポーン♪ えー、お呼び出しを申し上げます。並盛町にお住まいの山本武様。貴様は一体そこで何をしてやがります?」
そんなアナウンスが頭上から聞こえ、山本が綾里を抱きしめたまま上を見上げると、綱吉が片手をマイクに見立て、山本を険しい表情で睨みつけていた。
これはもう いつでも魔王化OKの合図だ。
山本の返答はというと、
「綾里を抱きしめてる」
「んなもん、見れば分かるわ! そうじゃないだろ!?」
「綾里、柔らかいぞ。女の子ってふにふにするのな」
「感想 聞いてるんじゃねぇよ!!」