第12章 標的12 体育祭
「気合で駄目なら愛だ。お前の綾里への愛で登ってみせろ」
「!!」
息を呑み、ぎゅっと棒をつかむ手に力を入れた綱吉を見て、リボーンがニヤリと笑った。
―――この少年を一番強く突き動かすのは、綾里への想いだ。
恋敵であるリボーンはそれがよく分かる。
もちろんリボーンは 綾里が綱吉を意識しないように「愛っていうのは幼馴染としてだぞ」と、すかさず付け加えた。
生徒をその気にさせつつ、恋敵にリードを許さない。
赤ん坊の姿と言えども さすが家庭教師である。
綱吉は思い返してみた。
綾里と過ごしてきた今までの記憶を。
それと同時に危なっかしい様子で、綱吉は一生懸命 棒を登り始めた。
『つなよし、いっしょにあそぼう!』
青空の下、太陽をバックに綱吉に向かって手を差し出す幼い頃の綾里。
小さい時から『ダメツナ』が災いし、近所の子達によく仲間はずれにされて一人ぼっちでいると、いつも あのちっちゃな手が明るい場所へと導いてくれた。
『こら!またそんなこと言ってる!』
どうせ自分はバカだと愚痴ったあの日。
いつも優しい綾里だけど、時には厳しく 駄目な所は怒ってくれる。
泣いた顔、怒った顔、困った顔…………。
長い時間 共に過ごしてきた中で 本当に沢山綾里の表情を見てきた。
その中でもやっぱり一番印象に残るのは、
「綱吉、頑張れ!」
―――綾里の温かい笑顔だ。
綱吉は無我夢中で棒を上り続ける。
それこそ星の数くらいある綾里への想いは、その分綱吉のスピードを加速させた。
「綾里ーっ!!好き…ブッ!!?」
ついに頂点に辿り着いた綱吉。
少年は ご近所中に綾里への愛を叫びそうになり―――リボーンの投げてきたグローブによって阻止された。