第12章 標的12 体育祭
「綾里ちゃんー! ツーナさん!」
何故か頭上から少女の声が。
名前を呼ばれた綾里と綱吉は上を見上げて―――驚きに目を見開いた。
「こっちですー」と片手を振るのは、これまた何故か電柱によじ登っているポニーテールの少女だった。
「「ハル(ちゃん)!」」
「危ないよ、ハルちゃん!」
「なっ何してんだよ!?」
綾里が心配そうにハルを見つめる。
綱吉が口をあんぐり開けて尋ねた。
「リボーンちゃんに聞きましたよ! ツナさんの総大将決定を祝って棒倒しのマネです!!」
「は!?バカ!お前スカートだろ! 恥かしいからやめなさい!!」
「……ツナさん、お父さんみたいです……でも実はハルも途中で失敗だと気づきました……。おりれなくなちゃったんです」
「誰がお父さんだ。 ―――手伝ってやるから降りろよ」
微妙に魔王モードになっている綱吉が「ほら!」とハルに手を差し伸べた。
けれどどうした訳かハルは一向に自分の手を伸ばそうとしない。
これには傍で見守っていた綾里も不思議そうに首を傾げた。
「ハル、おりれなくなちゃったんです」
「分かってるよ。だから、手!」
「ハル、おりれなくなちゃったんです」
「お前は壊れたテープレコーダーか!? ったく、どうしたんだよ? 一体……」
同じ言葉をリピートしまくるハルの目をよく見てみると、彼女は期待の眼差しで綾里のことを熱心に見つめているではないか。
ハルの熱い視線に気付いた綾里は綱吉に代わって手を差し伸べた。
するとハルは綱吉の時とは違い素直に綾里の手をとる。
「怪我しないように、ゆっくり降りるんだよ」
「はい! 有難うございます、綾里ちゃんっ!」
こいつは~!!
「最初からこれが目的だったんだろ!?」 綱吉は綾里に助けてもらって嬉しそうに笑うハルに意味ありげな視線を向けた。