第12章 標的12 体育祭
~綱吉 妄想中~
『ふっ、ちょろいな……。―――ジュリエット、この勝利 お前に捧げるぜ……チュッ』
敵の大将を踏みつけにして汗を華麗に拭う綱吉。
大げさすぎるほど 【イケメンフィルター】 がかかった綱吉は、一輪のバラにキスを落とし、ジュリエット―――綾里に手渡した。
バラを受け取った綾里はうっとりとした表情で綱吉を見つめる。
『先輩達に勝っちゃうなんて凄いわ! ああ、ロミオ! 私と結婚してくれる?』
『っ、もちろんだよジュリエット!おいで……』
想いが通じ合った綱吉と綾里は熱い抱擁を交わした。
『ああ、やっと……お前をオレのものにできる……』
『全部、アナタだけのものにして!』
『『うふふ、あはは!!』』
一体何なんだこの妄想。
私情が入りまくってるせいで、キャラが原形 留めてないぞ。
けれど恐ろしいことに当人は満足げである。
―――こうして綱吉の妄想劇場は幕を下ろした。
バンッ!!
綱吉が勢いよく立ち上がり、ぐっと握り拳を作る。
「よし!」(何が)
いきなりのことに綾里が不思議そうに問いかけた。
「綱吉、どうしたの?」
「……2人の未来の為に行ってくるよ、ジュリエット」
「ジュリ……? ? ?」
綾里が疑問符を飛ばす。
軽快な足取りで教壇へ向かう綱吉。
綱吉の登場に了平が嬉しそうに笑った。
「おお! やる気満々か、魔王!!」
「ああ。大将はオレに任せろ」
きっぱりと言い切った綱吉。
その姿に迷いは一切感じられなかった。
ここで勝手に大将を決められたことに対し生徒達からブーイングが飛び交うが、綱吉は教卓を勢いよく蹴り、喧騒を一掃させた。
「……オレに文句がある奴は前に出ろよ」
細められた、殺気じみた眼差し。
普段の彼からは想像できない、上に立つ者のオーラ。
了平が言うように魔王と呼ぶに相応しい人物がそこにいた。
誰もが言葉を失い、綱吉に魅せられている。
「手を上げろ」
綱吉のその一言だけで、
『イエス、ユア・マジェスティ!!!』
一斉に手を上げる生徒達。
魔王に対する了承が高らかに教室中に響き渡った。