第12章 標的12 体育祭
「お菓子作りの他に、それくらいしか取り柄がないんだけどね」と苦笑する綾里に獄寺がぐっと身を乗り出す。
「そんなことないです! 綾里さんは勉強も素晴らしい成績じゃないですか!!」
「それは苦手な数学を丁寧に教えてくれる先生がいるからだよ。いつも教えてくれてありがとう、隼人」
綾里に甘くとろけるような微笑みを向けられ、獄寺は今にも溶けそうなくらい表情を崩した。
「オレにできることなら何だって力になりますから!だから もっと……オレを頼ってください……」
2人の間に流れる妙に甘い空気。
一方、獄寺がそんな抜け駆けをしているとは知らなかった者達は、
「……へぇ、お前はオレ達の知らない間にそんな事してたの」
「今度はオレも混ぜろよ、な」
「獄寺君、私も参加していい?」
綱吉・山本・京子の3名は爽やかに笑うが、明らかに負の感情が言葉に滲み出ている。
「お、おう!……笹川は成績いいから来る必要ないんじゃ―――」
「いいでしょ?」
「はい……」
とびっきりの笑顔に怯えながら頷く獄寺。
京子は今度は綾里の手を握りながら必死に語りかける。
「―――綾里ちゃん、私だって勉強教えてあげられるよ。大勢の方が心強いよね?」
「う、うん! ありがとう……!(皆、迫力がっ……!?)
あのね皆、そろそろ了平さん達の話し合いに戻った方が―――」
「1のA 沢田魔王だ!!」
「「「「……はい?」」」」
突然、了平に勢いよく指差され 意味が分からずポカンと固まる綱吉達。
気まずそうに笑う綾里。
何故お前等はそんな所にいるんだと目線で語る生徒達。
あんなに騒がしかったのにシーンと静まり返る教室。
暫しの沈黙の後、別行動をしていた5人を代表して綱吉が素直に謝った。
「すみません。オレ達、
綾里のことに夢中で話をこれっぽっちも聞いてませんでした」
コイツ等、【綾里大好きチーム】だ
「何っ!? オレも仲間に入れろ!!」
アンタもか
話に加わる気満々な了平を目の前にして 他の生徒達は、
「このメンツで大丈夫か・・・?」と不安に思うのだった。