第11章 標的11 風紀委員長
「はい、どうぞ。召し上がれ」
綾里が抹茶のロールケーキを人数分、切り分けてくれた。
―――あの後。
このままでは本当に埒が明かないので、ここは一時休戦してちゃんと話し合うことにした5名。
雲雀はこれ以上群れているのは精神的に辛かったようで、綱吉達から離れたところでケーキを食べている。
綾里は綱吉達に雲雀と出会った日のことを話した。
話が一通り終わると、綱吉・獄寺・山本の3名は溜息をついた。
また恋敵が増えちゃったのね……。
心の中で涙を流す3人。
と、ここで綱吉が疑問を口にした。
「綾里は何で雲雀さんにお菓子を届けてるの?」
綾里はケーキを食べる手を止めると、嬉しそうに微笑んだ。
「それはね、恭弥さんが私の作ったクッキーを気に入ってくれて 『また食べたい』 って言ってくれたの。だから部活がある時には作ったお菓子をお裾分けしてるんだ」
「―――それも1つの理由だけど。
綾里は風紀委員でもあるからね」
雲雀がケーキを咀嚼しながら、さらりと言った。
間
「ええ、そうだったんですかっ!?」
綾里が吃驚して立ち上がった。
「何故本人が驚くの!? ……もしかして雲雀さん、勝手に決めたんじゃ……」
綱吉が怪訝な眼差しを雲雀に向ける。
「まさか、綾里さんを騙したんじゃねぇだろうな!」
獄寺がグサッとロールケーキにフォークを刺した。
「……事と次第によっちゃ、オレ達が黙ってねぇぜ?」
山本が黒く笑う。
「僕が綾里に酷いことするわけないじゃない。ま、君達には容赦しないけど」
(((コイツ……!!!)))
綱吉達がギリッと歯を食いしばった。
……何だか険悪な空気。
せっかくお茶会をしているのだ。楽しく過ごしたいと、綾里は場の空気を変えようと頑張る。
「あ、あの恭弥さん! もし私が本当に風紀委員だったとして……。今まで私、風紀の仕事をした記憶がないんですけど……」
雲雀はふっと笑った。
なんて優しい表情。どうやらこの表情は綾里がいる時限定らしい。
「綾里はちゃんと仕事してるよ。今まさにしてるじゃない、風紀委員の3時のおやつ係」
どうなってんだよ、おたくの委員会!?