第11章 標的11 風紀委員長
ゾクリ、綱吉達の背筋が凍った。
無理もない、雲雀が本物の殺気を向けてきたのだから。
張り詰める空気。それを打ち破ったのは―――
コンコン
「失礼します、いのりです。ケーキを届けにきました」
バスケットを持った綾里だった。
「「「綾里(さん)っ!?」」」
驚きの声を上げる綱吉達。
綾里は一触即発の空気を少しも感じとっていないのか、ふわりと笑った。
「あ、皆! あのね、私プリントで知ったんだけど応接室は風紀委員が―――」
そこで綾里の言葉は途切れた。
―――雲雀が綾里をぎゅっと抱きしめたからだ。
ピシリ、と固まる綱吉達。
綾里が赤面した。
「あ、ああの恭弥さんんっ!?」
「綾里、今日は何を持ってきてくれたの?」
耳まで真っ赤にする綾里に気をよくしたのか、雲雀は今度は綾里の髪に顔を埋めて尋ねた。
異性からのスキンシップに慣れていない綾里。
今にも気を失いそうだ。
綱吉達はショックが大きかったらしく、未だ動けずにいる。
「ま、まま、抹茶の、ロールケーキを、持って、きました……っ」
恥ずかしさのあまり、やっとの思いで喋る綾里。
雲雀は流石にこれ以上は可哀想かなと思い、少女を解放した。
ふしゅ~と、湯気を立てる綾里。
雲雀は綾里の頭をよしよしと撫でると、優しげな視線を向ける。
「あっちのソファで一緒に食べよう。飲み物は……緑茶でいい?」
「でしたら、綱吉達も一緒に……」
ぴたり。
雲雀が一時停止した。
彼は綱吉達をじぃっと見つめる。
……綱吉達は仲良く口をあんぐり開けて固まったままだ。
「……」
「「「……」」」
「…………」
「「「…………」」」
「…………………………」
「「「…………………………」」」
……オイ、いつまで続くんだこの沈黙は?
綱吉達が心の中でイラつき始めた時、ようやく雲雀が口を開く。
「……君達、誰?」
ちょっと待てゴラァッ!!!
綱吉達の怒りが爆発した。