第11章 標的11 風紀委員長
放課後の調理室。
調理室のドアには、 【スイーツ部活動中】 と書かれた張り紙が張ってある。
「上手にできてるといいな……」
エプロン姿の綾里が冷蔵庫からシートに包まれた生地を取り出した。
祈るような気持ちで細長い生地の両端をカットすると綺麗な渦巻き模様があらわれる。
成功だ。綾里は嬉しそうに笑うと、バスケットにケーキと食器類などを入れた。
綾里はエプロンを脱いで丁寧に畳むとバスケットを手に取り、部長に報告する。
「部長、私これから届けに行ってきますね」
話しかけられた部長は、綾里の所まで来るとバスケットの中を覗き込み、にこやかに笑った。
「まぁ、とっても美味しそう~―――あ、そうそう、今学期からまた場所が変わったみたい~。はい、これで確認してね~」
綾里は部長から受け取ったプリントを見て、
「あれ? リボーンさん、間違えたのかな……」
「リボーンさん……?」
「あ、いえ、何でもないです!」
綾里が慌てて片手をぶんぶんと振った。
「それでは、行って参ります」
「はい、いってらっしゃい~気をつけてね、転んじゃだめよ~」
元気よく出て行った綾里をまるで母のように見送るスイーツ部、部長。
そんな2人のやり取りを見ていた1人の部員が心配そうに言った。
「……毎回思うんですけど。綾里、大丈夫ですかね!?
食べられちゃったりしませんよね!? 私、心配で心配で……っ」
ううっ、と両手で顔を覆う少女。どうやら綾里のクラスメイトで仲が良いらしい。
部長は相変わらずのほほんと笑った。
「大丈夫よ~綾里ちゃんのスイーツは、とっても美味しいもの~」
「そうじゃないんです、部長っ!!」
少女の叫びが調理室に木霊する。
どうやら、スイーツ部の部長は綾里と同じ属性のようだ。