第13章 夏の思い出
ひよ里さんもまんざらではなさそう…
みんなと一緒に射的するのも楽しかったけど、今日はなんだかやっぱり喜助さんと2人でいたい…
「じゃあ琴乃、楽しんでね」
「あ、うん!紫苑もね!」
そう言って私は喜助さんの袖を掴んで、足早にその場を去った
「紫苑?どうしたんスか?」
3人の存在を感じなくなるところまで来て紫苑は足を止める
適当なところへ腰かけると、喜助はそれにあわせて向かい合わせでしゃがみ、目線を合わせる
「体辛い?」
優しい目で見つめられるとなんかもう…こんなこと言いたくなくなるんだけど…
「喜助さんを一人占めしたかったから…」
ズキュン─
ボクの心が撃ち抜かれた…気がした
「みんなとのお祭りも凄く楽しいです…でも、今日は2人で居たいなって…こんなこと言ったら、私小さい女って思われちゃうかな…」
喜助さんはちょっと驚いた顔をしたあと、私の頭をポンポンと優しく叩いた
ちなみに私はこのポンポンが結構好き…
「じゃあボクも小さいって思われちゃうかな」
「え?どうして?」
「ボクも紫苑と同じこと思ってたから」
「うそ…」
「嘘じゃないっスよ、紫苑のこと一人占めしたい…」
あ、どうしよう…なんか、ニヤケが止まらない
「嬉しい…っ」
「さ、次どの屋台行きますか?」
サッと差し出された手を掴むとグッと引き起こされる
立ち上がって、一度離れた手がまたコツンと触れて、喜助さんの指が私の指の間に絡んでギュっと握られる
私今日ドキドキしてばっかり…
「さっきの喜助さん、カッコよかったです…っ」
「惚れちゃいました?」
「……もう惚れてますっ」
その様子を、こっそり少し後ろから着いてきて眺めている3人がいた
「バカップルやな…」
「まだホヤホヤですからねー」
「デレッデレやな喜助」
「今日はこの辺で。邪魔しないであげましょーね」