第13章 夏の思い出
「あ!喜助さん!りんご飴!」
「かき氷食べていいですか?」
「喜助さん喜助さん!チャッピーのお面!」
緊張も溶けてきたのか純粋にお祭りを楽しむ紫苑
そんな紫苑を、喜助は少し離れたところに腰をおろして眺める
「あんなにはしゃいでかわゆいのぉ紫苑は」
「なにしてんスか夜一サン…」
「安心せぇ、今日は邪魔しないように隠れておるわい」
「こないだそれで失敗しましたよね」
喜助の座っているところの脇の茂みに、体を小さくしてタコ焼きを食べている夜一
「砕蜂サンまで…」
「私はお前たちには一切興味はない」
「ほれ砕蜂も食べるかの」
「そ、そんな!夜一様に食べさせていただけるなんてっ」
顔を真っ赤にし、わたわたしている砕蜂の口に無理矢理タコ焼きを突っ込む夜一
「ねぇ、夜一サン」
タコ焼きを食べながらんーと適当な返事をする
「幸せってこんな感じなんスかねぇ」
ゴクンとタコ焼きを飲み込むと、茂みに隠れたまま喜助を見上げる
「なんじゃノロケか」
「なんだってあんなに可愛いんスかね。反則っスよ」
「喜助がそこまで惚れ込むのは初めてじゃの」
「多分その内キュン死させられるんじゃないっスかね」
「どこで覚えたんじゃそんな言葉」
目線の先の紫苑がこちらを向く
「喜助さーん」
その手にはアイスのようなものを持っている
「今行きますよー♪」
「ベタ惚れじゃのぉ」
「ほんと邪魔しないでくださいね」
立ち上がり見下す位置にたった喜助の目線は、夜一に冷や汗をかかせた
紫苑の元へ着いた喜助の様子を、茂みから少し身を乗り出して見る
「アイスが欲しいなら買ってあげたのに」
「喜助さんも食べます?」
「いーんスか?じゃ、遠慮なく」
紫苑の食べ掛けのアイスをペロッと舐める
「き、喜助さんっ!」
「だって食べる?って聞いたでショ」
「もう1本買いますかって意味ですー!」
もぅ、と耳まで赤くする紫苑がかわいくて仕方ない
「もうすぐ花火あがるから移動しましょうか」
河川敷のほうへ移動すると、砂利が増えてきて下駄では少し歩きにくくなってくる