第13章 夏の思い出
琴乃に引っ張られて私も射的に向かう
「おー紫苑か……って」
「こんにちは!平子隊長」
「お、おゥ…」
いつもの元気とはちがう返事に紫苑は首を傾げる
待て待て待て!
首なんかかしげたら可愛さ100倍やて!
「紫苑の浴衣姿に見惚れてんのやろぉ真子ィ」
ニヤリと笑うのは甚平を着たひよ里
「ひよ里サン!こんにちは!」
「喜助と来とんか?」
「はい!」
「よっしゃ!紫苑のためになんか取ったるで!」
意気込む平子と紫苑の間に、割って入るようにコルク銃を担いだ喜助が立つ
「その必要はないっスよ、平子サン」
平子にだけわかるような殺気を含めた視線を送る
「邪魔すんなや、紫苑にカッコエェとこ見せたいんや」
「紫苑何か欲しいものある?」
「あ、あの……チャッピー……」
「紫苑チャッピーが好きだったんスか」
照れる私にニコっと笑うと待ってて、と言って狙いを定めた
そのコルク銃を持った姿にすらときめいてしまう私はきっと重症だ…
パンッ─と音がしたと同時にチャッピーが後ろに倒れる
私の胸もまたズキュン─と音をたてた
「はい、紫苑」
チャッピーのぬいぐるみを渡された私はありがとう……と小さく呟くと、赤い顔を見られないように下を向いた
「クッソォ喜助のやつ、エェとこ持っていきよったなァ!」
やけになった平子は、チャッピーの隣にあったユキのぬいぐるみを撃ち抜く
「ほれ、貰ってくれや。チャッピーやなくてごめんやけど」
「え、いいんですか?」
そこにははにかんで嬉しそうな琴乃がいた
「ひよ里はこっちや」
「パプルスやんけ!」