第12章 会いたいです
奥に自分の布団を敷いて、もう一度喜助のところへ戻ってくる
ついこないだまで、一般隊士と隊長という関係だったのに…
今はこうして、触れようと思えば触れられる距離に居る
「好き…」
やっぱり、ちょっとくらい、いいよね
喜助の隣に、喜助と同じ格好をして、腕を丸める
コツン、と頭が当たるくらいの距離
自分の吐息がかかるんじゃないかってくらい、近い距離で彼を見つめた
…─
夜中に目を覚ました喜助は、自分の腕に重みがのっていることに気がついた
「紫苑…」
卓袱台で寝てしまったのか…
まわりには枕やら掛布団が置いてある
髪も結ったままの紫苑
喜助はそっと紫苑の頭を腕からおろすと、丁寧に髪紐をほどいた
「さすがにここじゃ、身体痛いっスね」
布団が敷いてあることに気がついた喜助は、立ち上がり紫苑を抱き上げ布団に運んだ
ボクももう一回寝よう…
スヤスヤとした寝顔にそっと触れる
「好きっスよ…」
まだ、お互いのことを良く知らないのに、どうしてこうも惹かれるのだろう
まるでずっと前から、そうなる運命だったかのように、吸い寄せられるように、彼女に惹かれた
可笑しいな、ボクは…
運命なんて、目に見えないもの
非科学的なもの、これっぽっちも信じてはいなかったのに
彼女と出会って運命という言葉が、ごく自然に、すっと入ってきた
力を入れたら壊してしまいそう
きゅ、と紫苑の手に自分の手を添えた
「おやすみ」