第12章 会いたいです
「紫苑!」
「紫苑!」
隊舎に入ると琴乃とひよ里が走りよってくる
「ひよ里さん!琴乃…もしかして、待っててくれたの?」
「心配したんやで。もう大丈夫なんか?」
「べ、別に…ひよ里さんの仕事手伝ってただけで、帰ってくるの待ってたわけじゃないんだからね」
紫苑を見た時の嬉しそうな顔とは一変して、目をそらして照れを隠してる琴乃を見て、紫苑は心が暖かくなった
「もう大丈夫です。心配してくれてありがとう」
琴乃が気を利かせてまとめておいた紫苑の荷物を手渡す
それをすっと横から喜助の手がさらっていく
「紫苑はボクが送っていきますから。2人ともお疲れ様」
「お疲れ様でした、隊長」
「気ィつけてな」
空いた片手で紫苑の腰を支える喜助
「ラブラブですね、羨ましい」
「琴乃はおらんの?好きな奴とか」
「んーどうでしょう」
ふわっと笑った琴乃は、さぁ、私たちも帰りましょ。とひよ里に背中を向けた
「せっかくやしなんか食ってこーや」
「奢りですか?」
「しゃーないなァ」
「やったー!」
…─
「喜助さん、そろそろ…あれ」
お弁当の片付けをある程度終えた紫苑は、喜助が卓袱台で腕を丸めて眠っている姿を捕らえた
ちなみに紫苑が、夕飯を準備すると言うと、倒れた子にそんなことさせられないっス!と喜助が必死に拒否するので、帰り道に程近いお弁当屋さんで買ってきたというところだ
「寝ちゃってる…」
そりゃそうだよね…
三日三晩、ろくに寝てなかったんだろうなぁ
紫苑は出来心でそっと髪や頬に触れた
「…何やってんだろ、私」
我に返って恥ずかしくなる
寝かしてあげて、いいんだよね?
私の部屋で…
だって、つ…付き合ってるんだから
といっても、大の男の人を布団まで運べるわけもなく、喜助のまわりに枕や掛布団を置き、なんとか寝れそうな空間を作った