第12章 会いたいです
「紫苑もう帰っちゃいました?」
軽く息を整える
ひよ里は時計を見て改めて時間を確認する
「そういや30分くらい前に仕事頼んだんやけど、まだ戻って来ぉへんなぁ…」
それなら隊舎で待ってたほうが早いか…それとも迎えに…
「ひよ里さーん、紫苑が…」
「琴乃、どないした」
「あ、隊長丁度よかった…!」
琴乃が足早に駆けてくる
「紫苑、なんかあったんスか?」
喜助の顔色が変わる
悪い話しだったらどうしよう…
琴乃は喜助の珍しい表情に少し驚いた
「今、四番隊から連絡きて…紫苑が貧血で倒れたって…」
喜助が走り出すのに時間はかからなかった
「琴乃、ウチらも行くで!」
「あ、ちょっと待って、ひよ里さん。実は…」
「?」
…─
「紫苑!」
勢いよく扉を開けた喜助は、四番隊員と談笑する紫苑を見て驚いた
「喜助さんっ」
数日ぶりに会う恋人に、紫苑は嬉しさが込み上げてくる
「それじゃ西園寺さん、30分後にまた来ますから、それまで安静にしててくださいね」
「あ、はい。ありがとうございました」
四番隊員たちは喜助に会釈をして部屋を出ていく
「貧血で倒れたって…」
「隊舎から四番隊まで急いだら、ちょっと頭真っ白になっちゃって…でも隊員さんたちがすぐ処置してくれて、すぐに意識も戻ったから全然大したことな…」
ふわっと包まれる
いつもと少し違う匂い
きっと研究明けで、来てくれたんだろう
「心配した…」
「…喜助さん……心配してくれてありがとうございます」
「うん…」
紫苑を抱き締める力を緩めると、両手で紫苑の顔を包み、キスを落とした
「会いたかった…」
「私も…」
照れた顔をする紫苑の頭にポンと手をのせる
「研究終わったんですか?」
「うん。明日どうしよっか…体調良くないなら、やめとく?」
「嫌です!絶対行きます…だってずっと、楽しみにしてたから…」
きゅ、と喜助の袖を掴む
ドキッと喜助の胸が鳴る
「でも…また倒れたら…」