第1章 この子どこかで…
この子、やっぱりどこかで会ったことがあるような…
あの時は血だらけでよく見えなかったけど、改めてその顔を見ると初めて会った気がしなかった
漆黒の腰まである長くて艶のある髪、透き通るような白い肌、長い睫毛…
既視感…
目を開けたら、どんな顔をしているだろう
笑ったらどんなに、美しいだろう
早く起きて…
気がつくと月が昇り始めていた
少し長居しすぎたようだ
そろそろ戻らないと、そう立ち上がった時
「…ぅ……」
「紫苑サン?」
紫苑の指が少しずつ動き、一度眉間にしわを寄せた目はゆっくりと開いた
「ここは…」
「ここは四番隊です」
「あなたは…」
「ボクは浦原喜助です」
紫苑はまだ思考が追い付かないのか、喜助を見つめながら頭の中でいろいろと考える
そして目を見開いて
「琴乃は!?……っ」
急に上半身を起こしたからか、頭痛と目眩に襲われる
「まだ寝てなくちゃダメですよ」
喜助に促されるままに紫苑はもう一度横になる
「琴乃サンは無事です。もう回復して復学していますよ。毎日紫苑サンの様子見に来てるみたいっス」
「そっか…よかった…」
紫苑は天井を見つめ、これまでのことを思い出していた
「浦原隊長が助けてくれたんですよね。ありがとうございました」
喜助は首を横にふる
「琴乃サンが心配してましたよ。辛いのは自分よりも紫苑サンのほうだって」
「そんなことを…辛いのは琴乃です。私はあの子から大切なものを奪ってしまったんです…」
「大切なもの?」
「琴乃の大切な両親も、好きな人も…琴乃は工藤さんが好きだったんです」
やっと開いた目から伝わってくるのは悲しみの色
どっちが辛いとかじゃない
お互いにお互いを想いすぎてるのかもしれない
「紫苑サンのせいじゃない…だから、ね。泣かないで…」
腕で顔を隠し、小刻みに肩を揺らす紫苑を優しく撫でる
「ごめっ…な…さい…っ」
この子が泣くと、胸が苦しくなるのはなんでだろう…
こんな気持ち…初めてだ