第12章 会いたいです
「今の喜助に聞かせてやりたいわ」
「乙女ですよねー紫苑」
「なんであんなん渡してしもたんやろ俺…」
「渡しといてそれ言いますぅ?」
「紫苑の前でエェ格好したかったんやろ」
「はぁぁぁぁぁーーーーー」
また最初と同じため息が聞こえてきた
…─
技術開発局─研究室─
「はぁぁぁぁぁーーーーー」
ここにも大きなため息がひとつ
「ため息ばかりついてないで、手を動かし給えヨ」
独特な語尾、白と黒の顔が特徴の技術開発局副局長、涅マユリ
「何が嬉しくてこんなむさ苦しい野郎たちと、3日も一緒にいなきゃいけないんスかねぇ…」
「いつでも局長の座を代わってやってもいいんだヨ」
「はいはい、やりますやりますよ。何がなんでも明日までに終わらせますよ」
そこに局員の阿近が近づいてくる
「明日なんかあんのか?」
その言葉に喜助はニヤリと笑った
「聞いちゃいます?それ、聞いちゃいますぅ?」
ニヤニヤと阿近を見る
「気持ち悪いからやっぱいい」
「明日はねぇ、ムフフ」
「いいから手を動かしたまえヨ」
「かわゆい彼女と夏祭りデートなんスよー」
「局長に彼女なんていたのか」
「そっスよん♪あ、阿近サンも会ったことあるっスよね」
阿近は自分の記憶を手繰る
「あ、あの時の女か」
「そういえばあの時阿近サン、紫苑のこと口説いてましたよねぇー」
喜助の目が細くなり阿近に殺気に近いものを送る
「べ、別に手出す気ねぇよ」
「どうかなぁ…」
と阿近からゆっくりと画面へ目線をうつす
そのまま黙りこみ、研究にまた打ち込む