第11章 隊長とじゃなきゃ嫌です
その時フワッと紫苑の体が浮いた
気づくと群がってた隊員たちとは反対のところにおろされ、肩を抱き寄せられていた
「隊長…」
「皆さんスミマセン、西園寺紫苑サンはボクの彼女なので、手出しちゃ駄目っスよン♪」
満面の笑みで見せつけるかのように、紫苑を抱き寄せる力を強める
「ちょ、隊長…!」
「あぁ、言っておきますけど、万が一にも紫苑サンに手出したら…楽しみにしておいてくださいね♪」
その笑顔の奥のニコリともしていない目にその場の空気が凍りつく
「マジかよ‥」
「もっと早くアタックすればよかった‥」
「まさか相手が隊長だとは‥」
隊員たちのいるまわりの空気がドンヨリと重くなる
喜助は紫苑をもう一度担ぎ、隊首室に移動する
「スミマセン、勝手なことしちゃって」
「いえ…嬉しかったです…」
「それにしても紫苑サン狙ってる人多かったっスねー、心配だなぁ」
不安そうに見つめてくる隊長に私はちょっとキュンとしてしまった
「そんなこと…私は隊長しか…」
「とりあえずその隊長ってのやめましょうか?」
「え?で、でも…」
「ね、呼んでみて…」
紫苑の心臓はトクトクと鼓動を始めた
呼んでみてって言われても…
「えと……浦原‥‥さん…とか」
「‥‥」
「喜助‥‥さん‥っ」
「はい♪」
名前で呼ばないと返事しないなんて、イジワルだ
「紫苑サンは照れ屋ですねぇ」
喜助は紫苑に近づくと、耳の上の髪を自身の手に絡め、かき揚げる
「ボクも呼びたい」
右手は紫苑の後頭部にまわり、自身のほうへ少し力をいれる
近づいた左耳にできるだけ近づけて囁く
「紫苑…」
どうしよう…胸がキュンキュンしてる…
"紫苑…"
名前を呼ばれただけなのに…
「たいちょ…心臓もたないです…っ」
その時すぐ近くの壁に押し付けられた
「たいちょ‥‥?」
これがいわゆる壁ドンてやつですか?
もう頭がついていかないんですけど…
喜助は紫苑の手をとると、自分の指と紫苑の指を絡める