第11章 隊長とじゃなきゃ嫌です
「え、そういう関係だったんですか…西園寺さん!」
「あ、いや…」
「この子…紫苑サンはボクの彼女だから…諦めてくれませんか?」
え?今なんて?
隊長…今、彼女って…
「す、すみませんでした!」
紫苑に告白をしてきた男は足早にそこを去った
「隊長やるぅー」
琴乃が小さくガッツポーズしてたのはひよ里しか知らない
少しの間沈黙が流れたあと、耐えきれず口を開いたのは紫苑だった
「あ、の…隊」
「なんですぐ断らないんスかっ」
「へ?」
「へ?じゃないっスよ!ボクが来なかったらどうしてたんスか?断れなくて、あの人と夏祭り行ってたんじゃないんスか?デートに誘われて顔赤くしてるし…あの人のこと好きなんスか?夏祭り、別にボクとじゃなくても良いんスかっ?」
自分の胸に溜まっていたドロドロしたものを一気に吐き出した
焦った…
彼女が、紫苑サンが…他の誰かに取られてしまうんじゃないかって
もしかしたらボクじゃなくて、あの人と夏祭りに行くんじゃないかって…
言い切ってほんの少しスッキリして、心臓が震え上がった
紫苑サンがボクをまっすぐ見つめている
潤んだ瞳からは涙がポロポロこぼれている
ボクの思考回路が停止する
「ごめ……」
しまった…泣かせてしまった…
明らかに言い過ぎた…
こんな表情させたかったわけじゃないのに…
「た……や…」
「え?」
「隊長とじゃなきゃ嫌です…」
何だって?思っていた答えと違う…
普通、隊長なんか嫌い!とか何勝手に彼女にしてるんですか!とか怒るトコでしょ?
なのになんで、泣きながらボクじゃないと嫌とか言ってるの?
「ハッキリ断れないのは私が悪いです…でも、でも赤くなっちゃったのは、あの人にドキドキしたんじゃなくて…」
「紫苑サン…」
「デートしてくれませんか?って…、隊長が言ってくれたの思い出して…それでっ」
時々肩を上下させながら、一生懸命話す紫苑サンにもうどうすればいいかわからなかった
ボク今どんな顔してるんだろ…