第62章 新婚の在り方
「浦原さんに教えて貰って、作ってくれたんだって」
そうなの?と聞くように紫苑は喜助の顔を見た
喜助は静かに頷いた
「ごめんね、黙ってて」
「だからこの一年、平子隊長が来ること増えてたんだ…なんか2人でコソコソしてるなって思ってたんだけど」
「それは私も思ってたー」
「平子サンなかなか不器用っスから、時間かかりましたケド」
マユリは早く帰れと言わんばかりに眉をひそめている
阿近はそんな3人を微笑ましく見つめている
「それでね、復帰も決まったし、私真子とこっちに住むことにしたんだ」
「そっか…そうだよね…」
「でもでも、しょっちゅう遊びに行くからね!身重の紫苑も心配だし」
「…うん」
あからさまに声が小さくなる紫苑
やっとまた会えたのに、別にもう会えなくなるわけじゃないのに…
現世と尸魂界
遠いようで近い
近いようで遠い
ずっと、傍に居たから…
「紫苑…」
喜助は紫苑の心情を察して、手を握る
「やっぱり寂しいな…」
「え…」
かぁーっと赤くなっていく琴乃の顔
そうだ、琴乃サンは紫苑が大好きだった
「ど、どうしよう…紫苑が寂しがってくれてる…私やっぱこっちに住むのやめようかなっ」
「なんか言うたか?琴乃」
「げっ、真子!」
「げっ…とはなんや、げっ…とは」
眉間に皺を寄せた平子に、ごめんごめんと謝る琴乃
「平子隊長、結婚と復帰おめでとうございます」
寂しさを、握りしめて紫苑は笑顔で言った
「紫苑もな。妊娠したんやってな。おめでとさん」
紫苑は反射的にお腹をさする
「私のせいで、琴乃の復帰早めちゃってすみません」
「ええって別に。紫苑はゆっくり休み。無理すると喜助が黙ってないで」
「もう色々と釘さされてますけどね」
「だって口うるさく言わないと紫苑、アタシの言うこと聞かないでしょ」
そんなこと…ないと、少し不満げな表情の紫苑
「話しは済んだだろう?そろそろ帰り給えヨ。仕事の邪魔だヨ」
痺れを切らしたマユリが鬱陶しそうに目を細める