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With me

第62章 新婚の在り方



「マユリさん、本当にありがとう…」

「君を見ると何処かの誰かを思い出すから、居なくなって清々するヨ」

「代わりに私が来ますけどね~」


横から顔を出した琴乃を見て、マユリは思い出したようにため息をついた


「誰のことっスかねぇ」

「お前しか居らんやろ」

「それじゃあマユリさん、失礼します」


阿近にも挨拶を、と見回しても姿が見えない


「紫苑」


隣部屋の扉から出てきたのは今まさに探していた人物だった


「阿近、私そろそろ帰るね」

「これ、忘れ物」


それは私が仕事の時に愛用していた、現世から持ち込んだ大きなひざかけ


「体、冷やすなよ」


さりげなく私の肩にかける

それを奪ってかけなおす喜助


「あ、ありがと」


お礼を言ったものの、2人は視線を交わらせたまま返事はなかった


「相変わらず嫉妬深いな、浦原さんは」

「何か言いました?」

「いーえ、何も」


やれやれ、といった表情で眺める琴乃と平子


紫苑をさらうように手を引いて喜助は局を出た


隊をどうするかは結局決められず、とりあえず出産育児休暇と称して休隊しておくことにした


子供が生まれたら、また考えが変わるんだろうか…


「阿近サンのこと考えてるんスか…?」

「へ?あ、違うよ。子供が生まれたらって考えてたの」

「へぇ…」


あぁ疑ってる

私には喜助さんしか居ないって、100年前から言ってるのに


「ねぇねぇ、紫苑!子供生まれたら抱っこさせてね!」


空気を察したように琴乃が明るい声で話しかける


「お前結婚したんやから、いい加減嫉妬深いのどうにかしろや。大の大人がみっともないで」

「そういう自分こそ、黒崎サンに嫉妬丸出しだったじゃないスか」

「うっ…」

「琴乃サンもついに、平子琴乃になるんスねぇ」


平子は急に頬を染めて


「な、なんやねん!急に」

「良かったっスね」

「お、おゥ…」


苦労して作った指輪が無駄にならなくて

その言葉が聞こえたか聞こえてないか、平子は琴乃の指にはまるリングを見つめた






fin.

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