第62章 新婚の在り方
「そろそろ話し合わなきゃって思ってたんスけど…」
「なんの話し?」
喜助は紫苑の向かいに腰をおろし、腕を組んで話し始めた
「仕事をどうするかっス」
「どうする…って?」
「ボクとしてはこのまま隊を辞めて、家に入ってほしいんスけど…」
確かに喜助さんはさみしがりやだし、私が隊を辞めたって、収入も商店の分で問題なさそう
本当は色々と怪しいこともしてるみたいだけど…
今は人員不足だけど私が出産を終えて復隊できる頃にはきっと、私の代わりなんてたくさんいる
「でもこれは本当にボクの我儘な希望なんで、紫苑が仕事がしたいっていうならそれでも構いませんよ」
「すぐには…決められないかな…」
隊を辞めるってことは、 簡単なことではない
もちろん喜助さんはそれも分かっていて、言ってるんだろう
「そっスよね。少し、考えておいてください」
それからはまた他愛もない話しをして、1日が穏やかに過ぎた
…─
「マユリさん怒るかな…こんな時期に、って」
数日後、紫苑は喜助と尸魂界を訪れていた
理由は理由でも、きっとマユリさんには理解されないんだろう…
嫌味を言われる未来が見える
阿近にも何も言わず、喜助さんに急かされ現世にいってしまったからちゃんと話さないと…
「その辺は心配しなくて大丈夫っスよ」
「え、なんで?」
「ほら、着きましたよ」
技局に入る扉を開けると、相変わらず局員たちが忙しく動いていた
「涅サン」
マユリはチラリと喜助を見ては、すぐに手元の作業を再開した
マユリの次の言葉に紫苑は驚いた
「休隊したいんだろう?」
「え…」
「構わないヨ」
この人は本当にマユリさんなんだろうか
こんなにあっさりと、承諾をされると思ってもいなかった
それとも自分はもう此処には要らない、と言われてしまったのだろうか
「新しい四席も、もう決めてあるヨ」
「新しい四席…?」
どうして?
嫌だ…
ずっと守ってきた四席
琴乃の四席…誰にも渡したくないのに
紫苑は拳を握りしめた
「入り給えヨ」
扉が開いて入ってきたのは