第62章 新婚の在り方
「浦原さん呼んでいいですか?」
「…う、ん」
まだ胸がドキドキしている
喜助さんはどんな反応をするだろうか
ベッドに横になりながら勇音さんが印刷してくれた写真を見つめる
「失礼します…紫苑…」
検査を終えたのか、機械は隅のほうに片付けられている
手伝っていただろう若い隊員は、ボクが入ると同時に部屋を出た
「大丈夫、なの?」
「うん、平気…」
紫苑の手元には、写真のようなものが数枚握られていた
ちょっと戸惑ったような、照れたような、そんな表情をしていた
「それは?」
「あのね、あの…これ…」
「…こ、れって…」
紫苑から渡された写真を見てハッとした
「おめでとうございます。妊娠していますよ」
勇音の柔らかい笑顔が横目につく
「…本当に?」
写真と紫苑のお腹を何度も見る
「…そう、みたい」
喜助は紫苑を優しく抱き締めた
「嬉しい…夢みたいっス…」
「夢じゃ、ないよ」
「ここに、ボクと紫苑の子供がいるんスね…」
紫苑のお腹を優しく撫でると、くすぐったそうに微笑む紫苑
「名前、決めなきゃっスね」
「まだ男の子か女の子かも、分かんないよ」
じゃあ両方、考えておかないと
と喜助は紫苑に笑いかけた
その姿を勇音は優しく見つめていた
…─
「じゃあ紫苑、行ってくるね」
「あ、うん。行ってらっしゃい」
前にも増してここ数日、琴乃が出かける回数が増えた
どこに行くの?と訪ねても、"真子のとこだよ!"ばっかり
悲しいけどずっと一緒に居たから、琴乃が嘘をついていることくらいわかる
なんだか、隠し事をされているみたいで…寂しい
私は喜助さんにお店を手伝うことも禁止されちゃったし、鉄裁さんの家事を手伝うことも駄目って言われた
そんな私の今の楽しみは…
「紫苑、体どうっスか?」
喜助さんの、お店のお休みの日
「悪くないよ」
お休みの日は私に合わせてゆっくり過ごしてくれたり、調子の良いときはお散歩に連れていってくれる