第10章 キスされても知りませんよ
「た、隊長っ」
うそ…
どうしよう…
「…そんなかわいいこと言って…キスされても知りませんよ?」
「え…っ」
隊長の顔を見上げると、いつもとは違う真剣な顔をしていた
「目閉じて…」
ウソ…ほんとに…
ドクンドクン
胸の鼓動が脳内に響き渡る
紫苑はキュッと目を瞑った
瞬間
ちゅ
「おでこ…」
紫苑はおでこを手で隠しながら喜助を見る
「ここはまた今度…ね」
喜助の人差し指が、紫苑の唇に触れる
今度って…今度って…
いつですか…っ
「隊長…」
やっぱり私、隊長が好き…
ドキドキする度にその気持ちが確信に変わる
期待しても…いいのかな
隊長も、私のこと…
「帰りましょうか」
あと少しの帰り道を並んで歩く
幸せな時間はあっという間だった
「荷物持っていただいてありがとうございました」
「お祭り楽しみにしてますよン♪」
「私もです!」
「おやすみなさい」
「はい、おやすみなさい」
隊長の背中を見つめていたら、少し行ったところでふいに隊長が振り返った
ドキッ
隊長は笑って手をヒラヒラと振ってくれた
私も小さく振り返す
隊長が見えなくなるまで見つめていた
部屋に入って、布団に潜って、目を瞑ると今日の隊長とのデートが鮮明に映し出される
「私絶対今顔ゆるんでる…」
ふとおでこに手をやる
"ここはまた今度…ね"
思い出しただけで顔から火が出そうっ
紫苑は買ってもらった浴衣と髪飾りを綺麗に掛け、眺めながら、お祭りの日を楽しみに眠りについた
幸せだったな…